【操作マニュアル】短絡電流・遮断容量 計算の使い方|%Z法で受電点から各盤の三相短絡電流を計算・MCCB/ACBの遮断容量(Icu)を選定・ケーブルの短絡耐量チェック・系統図とA4計算書|セコサポ
「この分電盤の主幹は 25kA でいいのか、それとも 35kA が要るのか」——遮断器の定格遮断容量(Icu)を決めるには、その場所で流れうる短絡電流を知る必要があります。手計算では、受電点の短絡容量・変圧器の %インピーダンス・ケーブルの抵抗とリアクタンスを基準容量にそろえて足し合わせる作業が続き、盤が増えるほど手間が増えます。このツールは %インピーダンス法(基準容量 10 MVA)で、受電点 → 高圧ケーブル → 変圧器 → 低圧幹線 → 各盤の三相短絡電流(対称実効値)を一度に計算し、余裕係数を掛けた必要遮断容量を標準値(2.5/5/7.5/10/14/18/22/25/30/35/42/50/65/85/100/125/150/200 kA)から選びます。変圧器の %Z と負荷損はトップランナー変圧器(第二次・第三次)の代表値が容量・周波数ごとに自動で入り、銘板や試験成績書の値に書き換えることもできます。
あわせて、ケーブルが短絡電流に耐えられるか(I²t:JCS 0168-1 の簡易式 I = K·A/√t)、短絡点の X/R・力率・非対称ピーク電流(IEC 60909 の κ)と遮断器の試験力率(JIS C 8201-2-1)との照合も表示します。分電盤の下にさらに盤がぶら下がる系統は「親」を選ぶだけでツリーとして累積し、系統図と A4 の短絡電流計算書を出力します。低圧受電(電柱の変圧器から引込)にも対応。設計者の遮断容量選定、電気工事店の分電盤更新・回路増設時の確認、電験・施工管理の学習にお使いください。
主な機能
- %インピーダンス法(基準 10 MVA):受電点の短絡容量(50〜300 MVA・∞)、6.6kV CVT 高圧ケーブル、変圧器(三相 20〜2,000 kVA/単相 10〜500 kVA、2 台並列)、低圧ケーブルを %R・%X で合成し、各点の三相短絡電流を計算
- 変圧器の %Z・負荷損:ダイヘン TOP ECO Ⅱ(第二次 2014)/Ⅲ(第三次 2026)の油入・モールドの代表値を 50Hz/60Hz 別に内蔵。負荷損から %R、√(%Z²−%R²) で %X を求める。手入力可
- 盤ツリー:盤ごとに親(送り元)・ケーブル種類(CV 3心/CVT/IV 管内/CV 単心)・サイズ 2〜500sq・並列本数・長さを入力。抵抗は JIS C 3605 の導体最大抵抗(20℃・短絡電流が最大になる側)、リアクタンスはメーカー一般値
- 必要遮断容量:短絡電流 × 余裕係数(1.0/1.1/1.25)以上の標準値を自動選定。遮断容量(MVA)も併記
- ケーブルの短絡耐量:I = K·A/√t(CV:K=134、IV・VV:K=97)で、送り側の短絡電流に対する許容と「耐えられる時間」を判定。遮断時間 0.01〜1.0 s を選択
- 力率と非対称電流:各点の X/R・cosφ・κ・ピーク電流 ip を表示し、選定 Icu の試験力率(0.9〜0.2)と照合
- 電動機の寄与(合計 kW から定格電流の約 4 倍を加算)、低圧受電の柱上変圧器・引込線の見込み、よくあるパターン 5 種のプリセット
- 系統図(SVG)、計算の過程(式と数値)、A4 1 枚の短絡電流計算書、CSV、結果のコピー、履歴の保存、入力途中の自動保存
幹線の電線サイズ・遮断器の定格電流(AT)を先に決めるときは幹線・分岐回路 一気通貫計算、動力盤の主幹は動力盤 主幹ブレーカー選定ツール、高圧ケーブルの短時間許容電流は高圧ケーブルサイズ選定ツール、変圧器の諸元は2026トップランナー変圧器 諸元比較をあわせてご利用ください。本ツールは「その盤で流れうる短絡電流と、遮断器に必要な遮断容量」に特化しています。
使い方
- 「1」で受電方式(高圧/低圧)・周波数・受電点の短絡容量(電力会社の回答値。不明なら 100 MVA)・高圧ケーブルを選び、変圧器の相・二次電圧・容量・種類を選びます。%Z と負荷損は代表値が自動で入るので、銘板の値があれば書き換えます。
- 「2」で変圧器二次母線から各盤までのケーブルを入れます。主幹盤は「直結(0 m)」、分電盤は親に主幹盤を選んでケーブルと長さを入力。さらに下流の盤は親にその分電盤を選びます。
- 「3」で遮断容量の余裕係数と、ケーブル耐量の判定に使う遮断時間を選びます(MCCB 瞬時は 0.02 s が目安)。
- 右側(スマホでは下)に各点の短絡電流・必要 Icu・系統図・ケーブル耐量・力率の照合が並びます。「計算書を印刷/PDF」で A4 1 枚の短絡電流計算書に。
%インピーダンス法の考え方
電圧の違う高圧側と低圧側のインピーダンスをそのまま足すことはできないので、共通の基準容量(このツールでは 10 MVA)に対する百分率 %Z にそろえて足し合わせます。電源側は %Z = 基準容量 ÷ 受電点の短絡容量 × 100(100 MVA なら 10%)、変圧器は銘板の %Z を基準容量に換算(%Z × 10,000 ÷ 定格 kVA。500 kVA・%Z 4% なら 80%)、ケーブルはインピーダンス Ω を %Z = Z × 基準 kVA ÷ (10 × 電圧 kV²) で換算します。合成した %Z から、短絡電流 Is = 基準電流 × 100 ÷ %Z(基準電流 = 10,000 kVA ÷ (√3 × 電圧))が求まります。変圧器二次側の短絡電流は、電源側の短絡容量が大きいほど、変圧器の %Z が小さいほど、容量が大きいほど大きくなります。分電盤まで細い幹線が長く伸びていれば、そこでは短絡電流はぐっと小さくなり、必要な遮断容量も下がります。
遮断容量の選び方と注意点
遮断器は、その設置点で流れうる最大の短絡電流を安全に遮断できる定格遮断容量(Icu)を持っている必要があります。ツールは対称実効値に余裕係数を掛けた値以上の標準値を示しますが、実際の選定では、遮断後も使い続けられる Ics(使用短絡遮断容量)、上流の遮断器と組み合わせて下流の遮断容量を補うカスケード(バックアップ)遮断、事故回路だけを切る選択遮断協調もあわせて検討します。カスケード遮断はメーカーの組み合わせ表に従う必要があり、ツールの結果だけでは判断できません。変圧器直近の大電流点は、短絡電流の力率(cosφ)が遮断器の試験力率より低く、直流分を含む非対称電流が大きくなるため、Icu ぎりぎりの選定は避け、一段上の Icu を選ぶかメーカーに確認してください。
ケーブルはなぜ短絡電流に耐える必要があるのか
遮断器が短絡を切るまでのわずかな時間にも、ケーブルには短絡電流が流れ、導体温度が急上昇します。CV ケーブルは短絡時の導体最高温度 230℃(連続 90℃)、IV や VV は 120℃(連続 60℃)が上限で、JCS 0168-1 の簡易式 I = K·A/√t(A:断面積 mm²、t:通電時間 s、K:CV 134・PVC 97)が許容短絡電流の目安です。たとえば CV 38sq に 30 kA が流れると、耐えられる時間は (134 × 38 ÷ 30,000)² ≒ 0.029 秒。MCCB の瞬時引外し(0.01〜0.02 s)なら耐えられますが、短限時(0.1 s 以上)で切る ACB の直下では不足します。この場合はケーブルのサイズアップか並列、限流形遮断器の採用、または遮断器の設定見直しが必要です。ツールは各区間について「送り側の短絡電流」(ケーブル始端付近の短絡が最も厳しい)で判定しています。
よくある質問
Q. 受電点の短絡容量はどこで分かりますか?
電力会社(一般送配電事業者)に受電点の短絡容量または %インピーダンス(基準容量つき)を照会します。回答が「受電点 %Z = j10%(10 MVA 基準)」なら 100 MVA と同じ意味です。分からない段階では 100 MVA で計算し、安全側を見るなら「∞(無限大母線)」を選んでください。∞ は電源側の制限が無い最も厳しい想定です。
Q. 変圧器の %Z は銘板の値を使うべきですか?
はい。ツールの代表値は特定メーカーのカタログ値で、同じ容量でもメーカー・機種・製造時期で %Z は変わります(第三次トップランナー対応品は従来より高めの傾向)。納入仕様が決まったら、銘板または試験成績書の %Z と負荷損に書き換えてください。%Z が大きいほど短絡電流は小さくなるので、既設更新で変圧器を替える場合は再計算が必要です。
Q. 単相3線式の 100V 回路はどう考えますか?
ツールが計算するのは線間(200V)の短絡電流です。電圧線と中性線の間(100V)の短絡は変圧器の半巻線のインピーダンスで決まり、線間より大きくなる場合があります。住宅用分電盤の分岐遮断器の Icu を検討するときは、変圧器メーカーの資料や、電力会社が示す引込点の想定短絡電流で確認してください。
Q. 電動機の寄与は入れるべきですか?
運転中の電動機は短絡の瞬間、慣性で回りながら発電機のように電流を供給します。IEC 60909 の簡易法では定格電流の約 4 倍を見込みます。日本の遮断器選定では省略されることも多いですが、大型の動力負荷が母線に集中している工場などでは加算して安全側に見てください。合計 kW を入れると各点に一律で加算します。
リクエスト・お問い合わせ
「バスダクトの区間も入れたい」「発電機(非常用)運転時の短絡電流も出したい」「地絡電流や単相3線 100V 側にも対応してほしい」など、ご要望があればお気軽にお問い合わせからお寄せください。
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